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(19) 外国語を喋るという事

「あ、私○○○語を話せます。」

アルメニアには何の恐れも無くこう言ってのける人が多い。物凄く多い。
実際、中には○○○語(例えばロシア語、英語、フランス語)を実務レベルで話せる人もいるが、殆どの人が何を喋っているか分からなかったりする。

日本人とは基本的に「外国語を喋る」という考え方がまるで違うのかもしれない。あくまでもコミュニケーションの道具であるのだから、多少(実際は「かなり」)文法的に間違っていても相手に伝わりさえすれば良いと思っているのでしょう。

この辺、日本人は「文法が間違っていないかな?」とか「格変化はどうだったっけ?」とか喋る以前から異常に気にしてしまう。なんとも律儀な国民性である。

外国語を喋れば間違えるのは当然だと思います。この辺はアルメニア人の恐れもせずにシッチャカメッチャカでも「とにかく喋る!」という姿勢は大いに見習う価値がある。

ロシア語に至っては、「日本人のプロの通訳が喋っているのを聞いた事があるけど、格変化とか語法はかなり間違っていた」とあるホテルの従業員が言っていた事がありました。

そう、ロシア語は「それで飯を食っているプロでさえ間違える」難しい言語なのです。もっと言うと、6歳や7歳くらいからロシア語に触れ、尚且つテレビやラジオ等のメディアにロシア語で頻繁に触れる機会を持つ「アルメニア人」でさえ、相当に「間違いまくっている!」のです。

意外に思われるかもしれませんが、コレ本当です。

ソヴィエト時代は「ロシア語が出来なければ出世出来なかった」という不文律がソヴィエト連邦各国に厳然としてありました。なので、まぁ程度の差こそあれ殆どの人がロシア語を理解出来るそうです。

そして、旧ソヴィエト圏の国には沢山の「ロシア語で教育する学校」が在り、その当時では所謂「地元の学校」に行くよりも「ロシア語学校」で教育を受ける事が最高のステータスだったのだそうです。

連邦が崩壊して、各国が独立した今でこそ数は減りましたが各共和国に「ロシア語のみで教育する学校」があります。しかし、今では両親、または祖父母にロシア人がいなくては入学が認められないそうです。

学校一つそのものが「ロシア語のみで教育する学校」というケースと、「ロシア人の数が少ないからクラスの1つ、または2つをロシア語のみで教育するクラスにしている」という2つのケースがあるそうです。

独立してからというもの、各国の民族主義が盛んになり「我々の母国語を取り戻そう!」と沢山のロシア語系の学校が閉鎖されその国の言語のみで教育する学校に生まれ変わったのだそうです。

しかし、、、ここアルメニアに限って言えばアルメニア系の学校でも2年次から「ロシア語」の授業はありますし、結構グルジアやアゼルバイジャンに比べると「ロシア語が残っているし、ロシア語が第2公用語の位置を厳然と築いている」という印象があります。

グルジアは独立してから徹底的にロシア語を国から排除しようとしました。街中からは「ロシア語」の看板を撤去しまくったそうです。

アゼルバイジャンは書く時には「改良キリル文字」を使っていました。新聞も本も。が、何を思ったのかつい最近、全て「英語アルファベット」に切り替える政府令を或る日突然出してしまいました。

読み慣れて親しんだ文字を急に国家が廃止して、イキナリ似ているとはいえ英語アルファベットにされたら結構困ると思うんですけどねぇ、、、本とか新聞を読む時は戸惑いそうですね。学校教育でもイキナリ切り替わってしまったのでしょうか?

あるアルメニア人の話だとアゼルバイジャンは「兄弟国であるトルコに接近する為に文字を変えた」と言っていました。なるほど、一理ありますね。勿論、ロシアへの反発も多少はあったのでしょうケド、、、

話が横道に逸れて長々と書いてしまいましたので、話を元に戻しましょう。

僕はテッキリ「旧ソヴィエトの人は皆とても流暢にロシア語を話せる」のだとばかり思っていました。勿論、ネイティブではないから多少の訛りがあったりはするでしょうけど、子供の頃からロシア語に囲まれて教育を受けているのだから当然「ロシア人同様に喋れるのだろう、完璧に!」とずっと思っていました。

実際に自分がロシア語を勉強して如何に「ロシア語が印欧語の中でもとりわけ文法が複雑で難しい」かを実感するまでは、、、実は、文法だけではなくて読んでも書いても難しいのですが、、、。

毎日、泣きながら眠たい目を擦って「ヒーヒー」言いながら勉強したお陰で半年くらいしたらある程度人の話が理解出来るようになりました。

そこで気が付いたのが、結構アルメニア人は「デタラメなロシア語を臆せず喋っている」という事でした。

「間違いを指摘して揚げ足を取るなんて日本人としてイヤらしい行為だ!」とお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、コレが喋っていて結構困るのです。

まず、アルメニア人がもっとも頻繁にする間違いの一つがロシア語の男性名詞、女性名詞、中性名詞をいっしょくたにして、非常に適当に「その場の気分で」使い分けているという事です。コレはアルメニア語にロシア語のような「名詞の性」が無いという事に起因しているのだと思うのですが、特にどうしたワケかロシア語というのは「指示代名詞」が頻繁に出てくる言葉なのです。

そういえば、日本語ってあまり「彼」とか「彼女」という言葉は使いませんよね。大体の場合、「恋人」を指しますよね。あ、全然違う言葉なんですよね、、、

なので、例えばある男性の話をしていても突然、女性を指す「主格・она(アナ)」を使われたりします。当然、「ハテ?急に話が変わったのか?彼女とは誰の事だろう?」と考え込んでしまいます。

例えば、「コーヒー」は一見「中性名詞」のようですが実は「男性名詞」なのです。買い物に行くと、ここでもまたマジメにロシア語を勉強している日本人を混乱させるのです。

恐らく、アルメニア人同士でロシア語を喋るのであれば母語の言語構造自体に「名詞の区別」が無いからお互いに適当に流して話が通じるのでしょうケド、コッチはいつも混乱してしまいます。

ロシア語のその難しさは「格変化の恐ろしいまでの複雑さ」にあります。他にも動詞に関して言えば「完了形」と「不完了形」の使い分けがややこしいというのがありますが、、、

どうしてロシア語で「結婚する」という場合、男性が結婚する場合と女性が結婚する場合とでは違う動詞を使うのでしょう?そして、同じ「結婚する」なのに後に続く「格」が違うのでしょう?

  男性の場合 : жениться на + 前置格
  女性の場合 : выходить замуж за + 対格

まったく、、、勘弁してほしいッスね。

標準的には平仮名、片仮名、漢字を合計で2000文字以上使う言語を日常から駆使している日本人からすれば一見、「たかだか33文字から成っている言葉じゃない」と思われるかもしれませんが、間違いなく難しいのです、ロシア語は。そう、書いても(コレが自分には一番厳しい、、、)。

日本人にとって漢字はその一つ一つが意味を持つ「記号」なので、たとえ読み方が分からなくても意味をおおよそ理解する事は可能なのですが、印欧語はなかなかそうはいきません。勿論、文脈で判断する事も可能だし接頭語や接尾語でおおよその意味を推し量る事は出来るのでしょうけど。(因みに僕はまだそのレベルには達していない)特に「動詞」が分からないとお手上げです、、、

しかも、極々少数の希少な例外を除けばロシア人は物凄く早口で喋ります。外国人に対しても容赦ないです。恐らく、ロシア語は早く喋る言語なのでしょう。

「格変化つったってたかだか6通りでしょう?」と思われるかもしれませんが、名詞から形容詞まで全て格変化しまくりなので、これも「単純に覚えてさえいれば正しく喋れる」というものでもないのです。それに、イチイチ「動詞の後は何格がくるか覚えないといけないし、、、」ブツブツ。

あるアルメニア人に話を聞いたら「学校での勉強で最も大変だったのがロシア語の勉強だった」と、感想を漏らしていました。「苦痛だった。」とまで言っていました。結局、彼は喋れるけれども「文法的に正しく喋れるようにはならなかった」そうです。実は、彼だけに限らず「ロシア語は難しい」と言って嘆いていたアルメニア人には沢山会った事があります。

つまり、ソヴィエト時代に何年も勉強したにも関わらず、旧ソヴィエトの人達にとってさえもロシア語というのは習得し難く大変な労力を費やさないと身に付かない言語なのです。

結局、、、CIS各国が独立した時にグルジアやアゼルバイジャンのような極端な「ロシア・ロシア語離れ」のような結果をもたらした原因の一つに「ロシア語のような難しい言語を強制的に勉強させられるのはもうコリゴリだ!独立したんだからロシア語はもぅ沢山だッ!」という理由もあったのでは?とやや無理矢理な理論を展開するのは乱暴でしょうか?

ですが、根拠が無いワケではないのです。

比較的ロシア語と言語的に近いが地理的に遠い「ブルガリア」がCISに加盟したいという打診をロシアに送っていたワケですから、、、東欧諸国の共産主義が音を立てて崩れ始めた時に。勿論、政治的な思惑が一番大きかったのでしょうけど。

同じ「東方スラブ語」とはいえ、ウクライナ語は地理的にはロシアに近いのですが、ウクライナに滞在した時にロシア語とはかなり違う言語だと個人的には感じました。偶然手に入れたブルガリア語の本を読んだ時、ウクライナ語よりもブルガリア語の方が近いと感じたのですが、、、

グルジア語はコーカサス語族で、アゼルバイジャン語はアルタイ語族。そしてアルメニア語は印欧語、、、結構「ザカフカス」って言語的な接点が無いんですよね。

そんなワケで、アルメニアでもロシア語に比べれば遥かに文法が易しくて、比較的喋りやすく習得しやすい「英語」を勉強する人が増えているのだそうです。ロシア語ソッチノケで、、、

まぁ、どんな言語もネイティブ同様に話す事が出来るようになるには相当の努力が必要なのでしょうけど。

しかし、「コミュニケーションが十分に可能」な程度に英語を喋る人はアルメニアは多いと感じます。恐らく、CISで最も「英語が通じる国」なのではないでしょうか?上手な人も多いです。誰が言ったのか「英語は世界語」らしいですが、比較的勉強し易く文法が複雑ではないから喋りやすい!
と言う点では、確かに頷ける点もあります。その点でロシア語はまるで逆なんですよねー。(実際は、「大英帝国」の血生臭い過去の植民地政策の遺産である事は勿論知っていますが、、、)

実際、最近のアルメニアでは就職の際に「英語のスキル」を要求する所が多いのだそうです。なので、猫も杓子もアルメニアでは英語の勉強を頑張っているのだそうです。

「あ、僕は英語を喋れます」と、国籍不明の東洋人が歩いていると言い寄って来るアルメニア人が結構います。但し、、、コレもどうも信用がなりません。

謙虚(?)で「恥かしがり屋」な日本人であれば「I can't speak English」と言う所をアルメニア人は何の恐れも無く「喋れる!喋れる!」と言い切ってしまうのです。実際に、日本のレベルで言っても「I can't speak English」のレベルなのですが、、、

そうなるともう!恐ろしく大変!!!

何言ってるかサッパリ分からないし、相手は気持ち良く喋っているので話の腰を折るワケにもいかないし、、、

エチミアジンに行った時に通訳らしき(?)アルメニア人に声を掛けられて話をしているのを聞いていたのですが、、、彼は旅行者相手に英語通訳のアルバイトをしていたのですが、その英語がまた物凄くて、、、彼の通訳を聞いているアメリカ人夫婦も眉を顰めながら必死に聞いていました。

「アレで分かるの?」とアメリカ人夫婦に質問したら「殆ど分からない」との事。「でも、安かったし彼が車を手配してくれたりして安全に旅が出来ているからそれで十分。通訳なんて最初から望んでいないよ。」との事。(泣)

彼等曰く、アルメニアは結構本やパンフレット等、英語に訳されたモノが多いからそれで十分なのだそうです。まぁ、確かにCISでは一番「英語が溢れている国」かもしれませんね。

外国語を勉強して「喋る」というのはとても難しいケド、とても楽しい事でもあります。初めて訪れる国で何語を介してでも現地の人とコミュニケーションが取れるというのは素晴らしい事じゃないですか!

そして、「外国に住む」時はやはり喋れた方が何かと便利です。緊急の時とか、、、

日本人はアルメニア人を見習おう!発音なんかイチイチ気にしなくてもよいのです。文法が間違っていたって良いのです!臆せずに思い切って喋ってみると案外通じてしまうものです。

突き詰めて勉強しようと思ったら例え英語でも何語でも難しいのですが、結局の所、「喋れる」というのはどのレベルを指すのか今でもよく分からないままです。


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