(29) CISの警察
当然だ。幾らモスクワが国際都市の仲間入りしたからといっても、圧倒的に住んでいるのはロシア人、もしくはヴィザ不要のCIS人達なのだから。ロシアは多民族国家だからかえって外国人の見極めが難しいし、見た目が日本人みたいなロシア人も沢山居る。中央アジアの人の中にはヨーロッパ人には日本人と見分けがつかない人も多い。まぁ、体型で何となく分かるけれどもね。
但し、警察に車を意味も無く止められて賄賂を取られている現場を見た事は何度もあった。ロシア、ウクライナ、グルジアでは外国人が乗っていてもお構い無しでお金を徴収していたが、アルメニアでは外国人、特に日本人だと分かると物分りの良さそうな顔をして見逃してくれる事の方が多かったような気がする。結構、外国人に大しては物凄く体裁を気にする人達なのである。従って、CISの警察に関してはさほど悪いという印象が無い。日本の警察よりも遥かに「外国人に対してだけは」丁寧だと思う。
僕の個人的な印象だと、日本の警察の方がCISの警察よりもよっぽど性質が悪いと感じる。実際、日本の警察にされた理不尽な経験は幾らでもある。僕は、日本の警察を全く信用していない。日本人がロシアの警察に理不尽な思いをさせられている、という報告が多数あるようだけれども、日本に住んでいる外国人も日本の警察には相当に理不尽な思いをさせられているのだ。実際、外国人に日本で一番嫌いな人を聞くと「警察と暴走族」と言う人が多い。
ハッキリ言えば、大阪の署長だかが暴力団から多額の賄賂を貰っていた事件が明るみになって大阪府民が暴徒と化した事件やら、東神奈川県警の事件なんて、たまたま表面に出てきただけであって実際は日本全国の警察署でこんな事が毎日のように起きているのだ。実は、僕自身も日本の警官から賄賂を毟られた経験があるし、理不尽を被った被害者だ。
今思い出しても腹が立つので、5年以上前の事だけれどもココでハッキリと書いておこうと思う。
週末、買ったばかりのバイクに乗って羽田空港付近を走っていた。そしたらパトカーが追いかけてきて「止まれ」と言われて制止された。何もしていないのだから止まる必要も無いのだが、仕方が無く止まった。パトカーから二人の警官が出てきたかと思うと、「危険な運転をしたから罰則切符を切る」と抜かしやがる。法定速度を守っていたし、蛇行運転も勿論していない。一瞬、本当にワケが分からなくなった。
警察の言い分によると、自分の運転で危険な目に遭った歩行者がいるのだ、と言う。歩行者ですと?一人も歩行者なんて居なかったゾ!じゃぁ、その歩行者が本当に怖い思いをしたのか連れて来て立証しろ!と正論を言ったのが気に食わなかったらしい。殴られはしなかったけれども、腕を後ろに組んでお腹で体当たりされたり凄んできたりした。
しかし、コチラも納得がいかない。当たり前だ。切符を切られる理由がないからだ。後で知ったのだが、ちょうど警察のボーナスシーズンが近かったらしく、暴走族は捕まえられないから善良な納税者から理由を問わず、反則切符を切りまくって自分のボーナスを確保しなければならない時期だったらしい。
しかしだね、理由も無く反則切符を切れるのかね?というか、立証不可能じゃないか。その時は、自分には非が無いという自信があったので絶対に譲らなかった。とにかく、物凄い恐喝をされた。今にも殴りかからん勢いだった。物凄い不条理だ、とこの時は自分の運命を呪った。そして税金がどういった連中の懐に入っていくのかを知って、情けなくなった。日本が素晴らしい国だなんて、恐ろしい幻想だ。しかし、日本人の殆どはマインド・コントロールにかかっているから、日本は治安が良く素晴らしい国だと勘違いしている。こんな警察を放し飼いにしている国が素晴らしいのだろうか?
散々、粘ったからだろうか?実は僕に非が無い事を分かっているから強く叩けないからだろうか?警察は妥協案を出してきた。
「1万円分のビール券か図書券を用意すれば、この件は見逃してやる」と言ってきた。
はぁ?ビール券?何でビール券か図書券なのだ?サッパリ分からん。
後に、父親の会社の顧問弁護士に全てのいきさつを説明して「どうして金券を要求してきたのか?」を聞いたら、面白い話が聞けた。
「警察は表向きには、賄賂を受け取る事が出来ない。収賄で警察が警察に捕まるなんてマヌケな話が出来上がるし、不祥事が多過ぎるから国民からまた反感を買う羽目になる。だから、『金券』なの。金券はチケットショップでお金に換えられるからね。だから、金券ショップに何百枚も持ち込んで現金化している人がいたとしたら、警察官である可能性は高いね。結局、お金を受け取ってるじゃないかって?その通り!」
コレを聞いて本当に情けなくなった。殆どの警察官はコレを特権だと勘違いしてやっているらしい。直接、お金を受け取る事は出来ないから「金券」ですか。呆れてモノも言えない。つまり、CISの警察官みたいに堂々と賄賂を毟り取るか、日本の警察官みたいにコソコソと表沙汰にならないように国民から賄賂を毟り取るかの違いであって、本質は変わらないのだ。
その後、「警察」について調べてみたら、警察という職業は蟻地獄に近いものだと分かった。
まず、警察は公務員であるから厳然たる「学歴偏重主義」というのがあって、高卒の警察官は何人泥棒を捕まえようが、痴漢を撃退しようが、殺人犯を捕まえようが絶対に「巡査」以上には成れないらしい。よっぽど運が良くて「巡査長」で定年を迎えるのだそうだ。
大卒の同期には、どんどんと頭を飛び越されていく。幾ら手柄を立てても報われない。そして、警察というのは一度成ってしまうと定年まで辞められないものらしい。警察官を辞めて一般企業に行こうとすると、企業の人事は「警察を辞めたと言う事は、在職中に何かしでかしたんだな」と考えるのが普通なのだそうだ。なので、巡査クラスで警察を辞めると裏の社会でしか生きていけないらしい。
夕方に、無灯の自転車を捕まえてネチネチとやっている警察官やら新聞沙汰になるような大事件、女性に対する配慮ゼロのセクハラ発言や行為、こうした事をしでかす輩は、殆どが「巡査」クラスの人間がしでかす事らしい。
従って、暴走族やら暴力団、非合法行為を重ねる中国人やらイラン人を検挙しようがしまいが給料は変わらないのである。そして、一生涯「出世」も出来ないのである。大卒の同期は美味しい美味しい「天下り」を繰り返しているのを横目で見ながら、、、
そうした鬱積された感情は、善良なる納税者である国民に向けられるのだ。
言われてみれば、警察がマトモに働いているのを見た事が無かった。昔住んでいたアパートの階下に、キチガイのような音量で音楽を聞いている女の専門学校生がいたのだが、苦情を言っても言ってもまるで音量を下げる様子が無いので、警察に電話して相談してみた。返って来た返事は「そんな事、自分で解決して下さい」との事。結局、夜も眠れないほど酷かったので僕が引っ越した。完全なる敗北だ。
九州にツーリングしていた時に、見晴らしの良い場所で信号を待っていたら追突された事があった。警察に電話して現場検証してくれ、と言ってみた所、「今、休憩時間だから行けない。来れるんなら、ココまで来て。」と言われた。日本ほど警察がメチャクチャな国は無い!とこの時は本当に憤慨した。
話は逸れたが、その金券はくれてやったのかって?送るから住所と名前と電話番号を教えろ!と言ったら「それは言えない」と言われた。つくづく汚いというか、こすっからしい連中だ。「警察とはなんぞや?」をこの時に悟った。結局、一時停止の違反切符を切られた。していないにも関わらず切られた。弁護士に相談してみた所、立証が難しいし、その場に警察官が二人居たのであればくつがえすのは難しい、と言われた。連中もCISの警官並にしたたかだと知った。
こんな経験があるからか、CISの警官が特別に酷いとは思わない。日本はもっと陰湿だ。大体、何処の国の警察官も似たようなものなのだろうと思うけれどもね。
最近、日本人よりもCIS人の方が幸せそうな気がしてきた。確かに、生活は大変だし、社会環境はメチャクチャだけれども、メチャクチャだけれども、アルメニアの治安の良さは本当に大したものだと感心する。日本がアルメニアのような状況になったら、間違いなく凄まじい荒み方をするだろうと思う。失業率がバカ高いにも関わらず、アルメニアの治安の良さは奇跡的だ。但し、役所の公務員は相当腐っているけれどもね。
「警官」はその国の民度を量る、バロメーターだと思う。
日本は与党に好き放題させていたらば、社会構造が木っ端微塵に砕け散り、教育は崩壊し、治安は物凄く悪くなり、若者も馬鹿者も国の未来を見出せなくなっている。CIS標準に近づいてきたと言う事だ。僕は日本人だし、日本が好きだけれども今の日本が素晴らしい国だとはとても思えない。
アルメニア人に「日本は素晴らしい国だ」と言われる度に、僕はその誤解を説いてきた。
「日本の警察が走っている車を止めて、お金を毟ったりするのかい?」と聞かれれば、「換金可能な金券を要求してくる臆病でセコイ奴等さ」といつも答えていた。
すると、アルメニア人の反応。
「日本人は頭が良いなぁ。キチンと法律の網の目を潜り抜けているんだから。俺達も見習わなくちゃ。」
、、、ヤメなさいって。