(65) 幻の村へ③
道路も非常にまとも(?)です。街灯もありました。夜になっても点かない方に100ドラム!ですが、、、
建物も、さっきまでみた村の家等とは明らかに違ってまぁまぁマトモです。
因みに線路も見えました。アショットさんの話だと「トビリシ行き」の線路だそうです。
思ったのですが、こんな田舎でも女性は服装が物凄くちゃんとしているのには驚きました。
ビシーッとアイロンをかけたシャツで、上から下までとても清潔な感じでキレイです。
んでもって、またもや通りすがりの人に恥じも外聞も無く質問。
ワシ :「スミマセン、マラカーニの方々はこの辺に住んでいますか?」
通行人:「???(質問の内容がよく分かっていない様子)」
ワシ :「ゴメンなさい。実は僕はマラカーニの人達の事を知りたいのです。
北に方に住んでいると聞いたので、イェレヴァンから遥々やって来ました。」
通行人:「カリーニンの方に多分、、、」
何人かの通りすがりの人に聞いても、「カリーニンに行けば多分居る」というので向かう事に。しかし、つくづく僕はココでは「ガイジン」なのだと改めて認識。
街灯の左側には「トビリシ行き」の線路がありました。奥地に着いた途端に、まともになったのでビックリ!!
「ダーチャ」っぽい建物も沢山見掛けたのですが、、、建物も非常にしっかりしている感じ。
そして、カリーニンに到着。
あぁ、「デジャブー」だろうか?ずっと昔に見た事があるような、、、
千葉の田舎道を車で走っていた時に、ココに似たような光景を見た事が有るような、無いような、、、
確かにイェレヴァンと比べても田舎ですが、何処か哀愁が漂う「渇いた町」という感じでした。
このお店でコーラとタバコを買いました。チューリップ畑。奥に見える建物は学校。
フラフラと車で走っている内に、学校を発見。
もしかしたら学校の子が知っているかもしれないと思い、早速ソコを歩いている男の子に質問。
ワシ:「アノー、質問してもよいですか?この辺にマラカーニの方は住んでいませんでしょうか?」
少年:「僕がマラカンだよ。」
ワシ:「!?!?!?!?!?」
あぁ、、、ついに、、、ついにというか、、、やっとマラカーニに会えた!
イヤ、正確にはイェレヴァンでも見掛けてはいたのだが、、、
でも、返ってきた答えが余りにも唐突で思いがけないものだったのでビックリした!
この時は、本当にアドレナリンが高くなるのを感じました。メッチャ興奮したッ!
ワシ:「(怪しまれないように)この辺にマラカーニだけが住んでいる村ってありますか?」
少年:「ウーン、あるけど説明出来ない。僕のおばあちゃんに聞いて下さい。」
ワシ:「君のおばあさんに会っても良いの?平気ですか?」
少年:「勿論。」
少年を車に乗せて、彼の家まで連れて行って貰いました。
したら、明らかに「ロシア系」と分かるキレイな女の子がチョコンと出て来て、僕の方を「ジーッ」と見ています。吸い込まれるようなブルーの瞳でした。
少年に連れられて、アショットさんと一緒に家の中に案内されました。
少年は何やら、おばあさんらしき人と話すと分かってくれたみたいで
「ようこそ、どうぞお上がり下さい」と言って下さるではありませんかッ!!
ウゥ、嬉しい、、、正直言って不審者と見なされて追い返されるかと思っていたのに、、、
どうしてマラカーニの人、マラカーニの村を探しているかを話したら分かってくれて、
「今日は私達のイースター(復活祭)なんですよ。客人が見えるとは思っていなかったのですが、、、しかも、異国の人がみえるなんてねぇ。とても嬉しいです。どうぞ、何でも質問して下さい。」
と言って下さいました。
彼女の名前は「リューボフ」さん。正真正銘の「マラカンカ」だそうです。
僕を案内してくれた男の子も、玄関で見かけた女の子も彼女のお孫さんだそうです。
(因みにホームページの写真掲載許可は本人から頂きました。インターネットというものと、ホームページというものを理解して貰うのが大変でしたが、、、)
マラカンカのリューボフさん。沢山の質問に丁寧に答えてくれました。
ワシ:「まず、マラカーニとはどのような人を指すのか?という事と歴史について聞きたいのですが。」
リューボフ:「マラカン(男性)は結婚したら男は必ずヒゲを生やします。
コレは「イエス」がヒゲを生やしていたからです(あー!それでヒゲを生やしているのか!)。
結婚していない男性はヒゲを剃っても構いません。
そして、常に腰に「ポーイェス(ベルトとか紐のような物)」着けています。
マラカンカ(女性)は見ての通り、必ず頭に布を被ります。
結婚していない女性は常に着用していなくても平気です。
ですが、集会等がある時は未婚の女性でも着用しなくてはなりません。
女性はファールトゥックという生地の薄いエプロン(のような物)を身に着けます。
で、歴史ですが1830年に私達はロシア正教の受け入れを拒否したために皇帝ニコライ
(実はココの所が良く聞き取れなかった。)によって、タンボフの地から追放されたのです。」
ワシ:「え?エカテリーナではないのですか?」
リューボフ:「ニコライとアレクサンドルの二人にです。」
ハテ?アルメニア人からは「女帝・エカテリーナ」に追放されたと聞いたのですが?
ワシ:「何故、アナタ方は「マラカーニ」と呼ばれるのでしょうか?」
リューボフ:「私達は豚肉を食べる事が出来ません。これは私達の宗派の戒律です。
で、マラカーニは昔から毎週火曜日と金曜日にマラコー(ロシア語で「牛乳」の事)を
飲んでいました。今でもそうです。それは肉を食べないで済むように。
マラコーばかり飲んでいたので、当時のロシア人が私達の事を「マラカーニ」と
呼ぶようになったのです」
コレを聞いた時は目から鱗が百枚くらい落ちました、、、
ハァーッッッ、、、まさか「マラカーニ」の名前の由来が「マラコー」から来ているなんて
想像もつかなかった、、、あぁ、彼等、そして彼女等は本当に歴史の「生き証人」なんだ、、、
そう思うと、何やら彼女等からは崇高な「オーラ」のようなものすら感じてしまう。
彼女の話だと、マラカーニはマラコー(牛乳)ばかり飲んでいるので、普通のロシア人よりも肌の色が白いのだそうです。確かにさっき見かけた女の子も、男の子も白かったなぁ、、、
ワシ:「イコンに向かってお祈りをしないというのは本当でしょうか?」
リューボフ:「はい、しないです。私達マラカーニ(ロシアや他の国に住むマラカーニ全て)は
イエスが復活する事を信じています。私達の身の上に何か良い事があると、
それは私達の魂にイエス様が降臨された、と感じるワケです。
イコンではなくて、私達は白いタオルにお祈りをするのです。
マラカーニの家には必ず白いタオルが高い所に飾られています。」
コレが白いタオル、、、というか布。
ワシ:「どうしてアルメニアだったのでしょうか?他のザカフカスの地域ではなくて。
グルジア生まれのアルメニア人の友達が「グルジアには全くマラカーニは居なかった」と
言っていたのですが、何故その当時はアルメニアだけだったのでしょうか?」
リューボフ:「今でも殆どのマラカーニはアルメニアに居ます。
ですが、ロシアにもアメリカにも居ますよ。多分、ヨーロッパにも。
今から200年前に移民し始めたのですが、その時私達を親切に迎えてくれたのが
アルメニアだけだったんです。アルメニア人は親切でしょう?(ウン???)
グルジアとかアゼルバイジャン、北コーカサスは当時から争い事が絶えなかったので
行き着いた所が結局アルメニアだったというワケです。」
きっと、昔のアルメニア人はとても優しかったのでしょう。
ソヴィエト時代ともまた違ったアルメニア人が200年前には居たのでしょう。
ワシ:「時々、イェレヴァンでマラカンカの女性がキャベツを細かく刻んだものを
売っているのですが、アレは何でしょうか?」
リューボフ:「アレは、「マラカンスカヤ・カポースタ」と言います。
私達の常用食なんですよ。ロシア人はホラ、ボルシチにもキャベツを入れるでしょう?
ロシア人の好きな野菜といえば、やはり「ジャガイモ」と「キャベツ」なんです。」
ワシ:「あの、ところで今日が(復活祭)なのですか?
アルメニア正教ともロシア正教とも違う日ですね。」
リューボフ:「はい、なのでパンケーキを作りました。どうぞ食べて下さい。」
何処の馬の骨とも知れない「ガイジン」をこんなにも親切にもてなしてくれるなんて、、、
そういえば、ステパナケルトに行った時もマラカンのおっちゃんにとても親切にされたよなぁ、、、モスクワの荒れ狂った極右のロシア人もロシア人だけど、マラカーニの方々もロシア人なんだよなぁ、、、
なんか、決して豊かではなさそうだけど潔癖で美しいと感じてしまう。
因みに、彼等の「復活祭」はこれから1週間、毎日行われるそうです。
リューボフさんのお姉さん、耳が聞こえないそうです。
ワシ:「あの、因みにマラカーニは全てココ「ディリジャン」に住んでいるのでしょうか?」
リューボフ:「(少し考えてから)ココにも沢山住んでいます。ですが、以前ほど多くはありません。
この先を20キロほど行った所にマラカーニだけが住んでいる村がありますよ。(!!!)
ココでは多分、アルメニア人とマラカーニの割合は4対1くらいでしょうか?
まぁ、数はイェレヴァンと同じくらい住んでいますケドね。」
ワシ:「マラカーニだけですかッッッ?ど、何処にその村があるのでしょうか???
僕みたいは「ガイジン」でも行けるのでしょうか???」
リューボフ:「ココからヴァナゾールの方に抜けていく途中にあります。
村の名前は(フィアレータヴァ:ロシア語で紫色の意味)と言います。
勿論、アナタでも行く事は出来ますよ。」
ワシ:「そこは、丸っきりマラカーニだけが住んでいるのですか?」
リューボフ:「そうです。マラカーニだけが住んでいます。とても小さな村です」
あぁ、ついに、、、「幻の村」の場所を突き止める事が出来たッッッ!!!
行き当たりばったりに探していたのに本当に見付かるだなんて、、、
一体どんな村なんだろう?もぅワクワクするッッッ!!!!!
沢山、沢山!本当に彼女には感謝しきれないです。お礼の言いようも無い。
場所を詳しく聞いて、沢山お礼を言ってリューボフさんの家を後にしました。
「また来て下さいネ」と言って貰えたのは社交辞令だとしても嬉しかった。
「出来たら、撮って頂いた孫達の写真を送って下さい。」
と言われました。ハイ、必ず送ります。
と言うか、近くをまた通ると思うのでその時に必ずお渡します。
地方だから写真を撮っても現像が大変なのだそうです。