(5) それはそれは不思議な国
勿論、楽しい事ばかりではないけれどもこの国では誰も僕の事なんて知らないし、何やら日本を離れて自分が新しく生まれ変わったかのようです。
自分が日本に居た頃に比べて変わったなぁ、と感じる事は、「大胆になったし、物事に動じなくなった」という事でしょうか?
日本に居た時の自分は、どちらかというと能動的な「普通の日本人」だったのですが、コッチ(CIS)に住んでから、変な「度胸」がついてしまいました(謎?)。とんでもなく困難な毎日を乗り切って、しぶとい旧ソ連人を相手に生活している内にこんな特性が勝手に身に付いてしまったようです。そして、大学教授や芸術家といった面白い人達と思いがけず出会えるチャンスに恵まれるというのも「ガイジン」の特権かもしれないです。
勿論、アルメニアでは日本人なんて希少人種なので何処に行ってもジロジロと見られてしまいますが、それでも自分の知らない文化に触れ、人種が違えど言葉を交わしてお互いを理解出来るという事はなかなか楽しい事です。
何もかもが日本のソレとは大きくかけ離れた旧共産主義国、旧ソヴィエト連邦の構成国「アルメニア」は何もかもが目新しくて、不思議で、そして何よりも非効率的で面倒臭くてヤル気が無くて、、、
ソレとは逆に、何処に行っても日本や日本人の事を聞かれるのでアルメニア人にとっては極東にある小さな経済大国から来た日本人は何やらミステリアスで珍しいのかもしれないですが、、、(アルメニア人はとにかく、どうして資源にも恵まれていない、地理的条件も良くない日本のような小さな島国が経済大国に成ったのか興味津々らしい。)
成田から飛行機を乗り継いで15時間近くかけてやっと辿り着けるような遠い国ですが、実は住んでみて意外なほど「なんとなく日本人と考え方が似ているよなぁ」と感じる事が幾つか有ります。
コチラの人はとにかく「客が来たら絶対にもてなさなければならない」という妙な使命感があって、チョット電話で呼ばれたので行ってみるととても食べきれないような凄まじい量のご馳走を作って待っていてくれたりします。
「エー!いいですよ!なんとなく電話で呼び出されただけじゃないですか」等と言おうものなら「いや、この間君は私にコニャックをプレゼントしてくれたから、是非とも一緒に食事がしたいのだ!」と返されてしまいます。あー、そういえばやっと仕事が見付かったと言ってたから「お祝い」としてコニャックをプレゼントしたんだよなぁ、そんな事スッカリ忘れてた。
その後は、飲むし!食うし!歌うし!踊るし!
大変疲れます。1週間に5回も人の家に呼ばれた事もありました。
日本人らしく律儀に「あんなにもてなしてもらったんだから、キッチリお返しをしよう」と思いヴォトカやらシャンパン(どちらも安い)を買って持っていくと、「イヤー!なんでまた君はプレゼントしてくれるのだ?」と言って受け取りを拒否しようとするのですが、そこは無理矢理ねじ込みます。
すると、数日後にまた電話がかかってきて「ご馳走を作って待ってるから今スグ来て欲しい!」と言われてしまいます。
あー!もぅ、日本の「お歳暮」みたいでキリが無いですね、、、
コレが親しい友達であればある程、永久ループにはまってしまうので非常に注意が必要です。
中には借金してまで「もてなすゾ!」という人達も居るので最近は呼ばれても「具合が悪い」とか適当な理由をつけて断るようにしています。だって、申し訳ないもの、、、
実は、アルメニア人自身もこの妙な「客人をもてなさなければならない」という使命感(伝統?)に困っている人が多いらしいです。そりゃ、そうですよね。家庭の財政への圧迫は物凄いし、イチイチ人の家に訪れるのにお菓子を持っていったり、お客さんが来ると美味しそうなチョコレートの箱を開けたり、、、
ソヴィエト時代はロシアよりもカフカスの方が断然豊かだったらしいのですが、この破綻した経済の中でその伝統を律儀に押し通すのはさぞやしんどいだろうなぁ、と思ってしまったりもするのですが、、、
でも、どことなく日本人に通じるような感情は時々感じます。
アメリカ人やヨーロッパ人と違って、日本人同様「ハッキリとモノを言わない人達」です。
「こんな事言ったら、もしかしてこの人に嫌われるかもしれない」とか、
「角が立つような事は言わないようにしよう」と思うらしいです。
(その割には、陰で悪口を言い合っていたりするのが不思議だ、、、?)
お互いに助け合ってるように見えて、実はそうでなく喰い合っていたり、後で詳しく述べますが、なけなしのお金で大見栄をはったり、親切そうで親切でなかったり、不親切そうでビックリする程誠実で感心するくらいに気を利かせてくれたり、、、
そして、コレが一番アルメニアに住んでいて意外に思った事なのですが、
実は日本以上の強烈な「村社会」だったり、、、(後に述べます)
何処の国も「国民性」という捕らえどころの無い概念を掴むのはなかなか難しい事ではありますが、特殊な歴史を持ち、それこそ世界中に離散した同胞をもつアルメニア人を定義したり、理解するのは不可能に近い事かもしれないです。
アルメニア人とは、それはそれは不思議な人達。
住めば住むほど、何やら「不思議の国のアリス」よろしく不思議で、不可解で、そしてソヴィエト的で、、、
3週間程度の旅行だと非常に楽しめる国だと思いますよ。
但し、「正しくソヴィエト的な国」でもあるので何かと不便ではあるのですが、日本では金を払っても経験出来ない事が経験出来ます。
「水が無い生活」「我慢に我慢を重ねる生活」「寒い生活」「政治家(公務員含む)がトコトン酷い生活」ひっくるめて「不便な生活」ですね。
いい友達が出来たりすると、本当に大切にしてくれたりもします。
慣れるとコレもなかなか愉しめる!等と平気で言ってしまえる自分はもはや末期症状かもしれない、、、